令和4年3月1日(火),「知識集約型社会を支える人材育成事業」令和3年度成果発信シンポジウム~社会共創を通した人材育成モデル構築を目指して~をオンライン開催し,教職員・学生206名が参加しました。本シンポジウムは,メニューⅠ(文理横断・学修の幅を広げる教育プログラム)採択校の新潟大学,金沢大学,信州大学,大正大学,東京都市大学,メニューⅡ(出る杭を引き出す教育プログラム)採択校の麻布大学,メニューⅢ(インテンシブ教育プログラム)採択校の千葉大学,早稲田大学及び名古屋商科大学の9機関が初めて一堂に会して開催した合同イベントです。
冒頭,早川 慶 文部科学省 高等教育局 大学振興課 大学改革推進室 室長補佐より開会のご挨拶がありました。続いて,片岡 邦重 金沢大学 学長補佐から幹事校挨拶及び本事業略称名とロゴマークの発表がありました。本事業略称名は,英語名称である「Human Resource Development Project for Supporting Knowledge-Based Society」から大学教育改革を更に発展させる意味を込めて「DP(Development Project)」事業と称しました。ロゴマークは,DP事業のDとPをモチーフに作成し,DとPを組み合わせたシンボルは「芽」のような形状になっており,これは本事業で育成する新しい人材の誕生を表現しています。
続いて,山崎 光悦 金沢大学長から「知識集約型社会における文理融合教育の意義と価値」と題し,基調講演がありました。日本のイノベーション力弱体化を克服するため,分野の壁を超えた学ぶ文理融合教育が必要であり,金沢大学では,従来から,異分野融合による人材育成を学士課程教育から大学院教育まで一貫して進めてきたことが紹介されました。
分科会セッションでは,Zoomのブレイクアウトルームを使用して,参加者は分科会1~3を自由に選択し聴講しました。分科会1では,新潟大学・金沢大学・東京都市大学(いずれもメニューⅠ採択校)による「どのように文理融合・分野横断の学びを展開していくか~自律的な学習者を育てるためのアカデミック・アドバイジング~」というテーマで,分科会2では,麻布大学(メニューⅡ)・信州大学(メニューⅠ)・大正大学(メニューⅠ)による「出る杭を引き出すについて」というテーマで,分科会3では,早稲田大学・千葉大学・名古屋商科大学(いずれもメニューⅢ採択校)による「インテンシブ教育の教育効果・メソッドの考究」というテーマで各大学の取組紹介や意見交換を行いました。
分科会セッション終了後,参加者は全体会場に戻り,松本 美奈 上智大学特任教授(教育ジャーナリスト)より「STEAM教育の可能性 学生の質問力を磨く」と題し,基調講演がありました。政府主導の大学改革による格差の拡大,大学教育改革によって変わらない社会的序列を真剣に見つめ,今こそ,大学改革を大学の手に取り戻すときではないかと問い掛けました。また,効率性をばかりを追いかけるのではなく,学生自らが物事に疑問を抱き,質問することで学びを広げていくことの必要性を力説されました。さらに,これまでの補助金事業による分断を乗り越えて,本事業を通して社会の価値観を変え,「STEAM学生はすごい」という市場を創っていく意気込みが必要であると提案されました。
後半では,各分科会座長機関登壇者から簡単な分科会報告があり,「問いを立てる教育(分科会1)」「学生の自己肯定感が低い(分科会2)」「学修評価指標設定や教員間連携の難しさ(分科会3)」といったキーワードが提示されました。その後,「知識集約型社会を支える人材育成事業への期待と要望」をテーマで,松本氏が各分科会座長機関登壇者との対談形式で意見交換が行われました。松本氏からは,補助期間終了後の見通しについて問いかけがあり,「教員の意識改革」「学生の方からの学びの意識改革」「教える内容をディシプリン・ベースからイシュー・ベースにすべき」といった意見がありました。文系・理系と区分した教科教育や大学入試制度に話が及び,数理・AI・データサイエンスといった文系・理系を問わない分野への期待が述べられました。採択校一丸となって,本事業で取り組んでいる内容を真剣に議論し合い,新しい人材育成の価値を社会に発信していく重要性が認識されました。
本シンポジウムは,林 透 金沢大学 教学マネジメントセンター教授及び山下 貴弘 金沢大学 教学マネジメントセンター特任助教の進行により進められ,特に,後半の意見交換では,松本氏からの的を射る質問が次々と投げかけられ,今後の事業展開に向けて示唆に富む指摘を得ることができました。参加者にとっても,大変満足度の高い内容となりました。
本シンポジウムのチラシはこちらをご覧ください。